属人化の解消に成功した企業事例3選|共通点と失敗しない進め方
属人化の解消に成功している企業では、単にマニュアルを作るのではなく、ベテラン社員が持つ知識や判断基準を共有し、必要な社員がいつでも確認できる仕組みを整えています。
こうした成功事例を参考にすれば、「過去にマニュアルを作ったものの更新されず、使われなくなった」「担当者が休職・退職すると、ほかの社員では業務を進められない」という悩みを解消するヒントが得られます。
とくに、手順を文書化するだけではなく、判断基準やイレギュラー対応まで残し、情報を継続して更新・検索できる状態を作ることが、属人化を繰り返さないためのポイントです。
そこで今回は、属人化の解消に成功した企業3社の事例や、成功企業に共通するポイント、失敗しやすいパターン、自社で取り組むための進め方をご紹介します。
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この記事でわかること
- 建設業・製造業・教育業界の事例から、属人化の解消につながった具体的な取り組みがわかります。
- 属人化の解消に成功した企業に共通するポイントは、「影響の大きい業務から着手する」「手順だけでなく判断基準や例外対応まで残す」「情報を更新し、誰でも探せる仕組みを作る」の3つです。
- 属人化の解消は、「業務の洗い出し」「優先順位付け」「ナレッジの文書化・集約」「更新ルールの設定」の4ステップで進められます。過去にマニュアルを作ったものの定着しなかった企業でも、何を変えて取り組むべきかを整理できます。
属人化の解消に成功した企業の事例3選
以下では、属人化の解消に成功した企業の事例3選をご紹介します。他社の成功事例からヒントを得たい方は必見です。
【建設業】ベテランの暗黙知に若手がアクセスできる仕組みづくり

三晃金属工業株式会社は、金属屋根を中心に、防水・外壁工事から太陽光発電事業まで幅広く手掛ける建設会社です。500名以下(2025年3月末時点)の会社全体の業務改善を進めるため、部門を横断した「BPX班」を立ち上げています。
同社では、現場で培われた専門知識やノウハウがベテラン社員の頭の中にあり、メールやチャットにも情報が埋もれていることが課題でした。とくに若手社員は、必要な情報が見つからず、「誰に聞けばよいのかわからない」「大量の資料から探さなければならない」という状況に陥っていました。
そこで、複数のナレッジ管理ツールを比較したうえで「ナレカン」を導入しました。具体的には、社内規程や営業補助資料、技術資料などを1か所に集約し、わからないことがあれば「検索する→周囲に確認する→ナレカンで質問する」という流れを社内で徹底しました。
その結果、若手社員からは、気兼ねなく質問できるようになったという声が上がり、疑問の早期解消やスキルアップにつながっています。また、質問を受ける側も現場が困っている内容を把握できるため、不足している情報を特定して追加できるようになりました。
さらに、定着させるために「質問内容やレベルを気にしない」「批判しない」といったルールを設け、回答者にも完璧な回答を求めず、わかる範囲で素早く回答するよう促しています。このように、属人化の解消では、ベテランの知識を残すだけでなく、若手が質問しやすく、回答を新たなナレッジとして蓄積できる仕組みまで整えることが重要です。
【製造業】拠点ごとのイレギュラー対応を共有し、検索時間を最大90%削減

古河電気工業株式会社は、光ファイバーや電力ケーブルなどを提供する非鉄金属メーカーです。平塚事業所の総務課では、庶務・厚生に加えて人事労務に関する業務を担当しています。
同社では、必要な情報がTeamsやメール、共有フォルダに散在していました。また、各拠点で発生したイレギュラー対応が共有されず、似た事例でも各担当者が一から判断する状態になっていました。
そこで、13社のツールを比較したうえで「ナレカン」を導入し、約60名の人事労務担当者で活用しました。社内規程や各拠点の対応事例を集約し、「基礎知識」と「イレギュラー事例」に分けて整理しています。
その結果、必要な情報を探す時間を最大90%削減しました。各拠点のイレギュラー事例も横断して確認できるようになり、新入社員でも過去の事例を参考にしながら問い合わせに対応しやすくなっています。
定着に向けては、記事のテンプレートを用意し、作成する記事タイトルを先に決めて担当者へ割り振りました。現在では600件弱の記事が蓄積され、「まずナレカンで調べる」という習慣が根付いています。この事例から、属人化を解消するには、担当者ごとのイレギュラー対応を個人に留めず、誰でも検索・参照できるようにすることが重要だとわかります。
【教育・多拠点】異動のたびの引き継ぎ問題を解消し、業務負荷が約1/10に

株式会社アップは、0歳児から社会人までを対象に幅広い教育サービスを提供する企業です。複数の小教室を展開し、講師や事務担当者などさまざまな職員が各拠点で働いています。
同社では、拠点ごとに情報の管理方法が異なり、異動するたびに必要な情報を探すところから業務を始めていました。また、十分に情報を整理できないまま引き継ぐケースもありました。
そこで「ナレカン」を導入し、各教室が同じ情報を参照できる環境を整えました。既存のナレッジをまとめて登録し、「検索すれば必要な情報が見つかる状態」を作っています。
その結果、異動後も検索して必要な情報をすぐに確認できるようになりました。また、電話やチャットで繰り返していた質問も減り、質問者・回答者を合わせた業務負荷は体感で約1/10になっています。
定着に向けては、社内への定期的な情報発信を続け、導入から半年ほどで検索数が大きく増加しました。このように、属人化を解消するには、拠点や担当者ごとに情報を持つのではなく、異動後も同じ情報を探せる仕組みを整えることが重要です。
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成功事例に共通する3つのポイント
属人化の解消に成功した企業には、単にマニュアルを作るだけでなく、取り組む業務の選び方や情報の残し方、運用方法に共通点があります。
以下では、先ほど紹介した3社の事例を踏まえて、属人化を解消するときに押さえたい3つのポイントをご紹介します。
影響の大きい業務から着手している
属人化を解消するときは、すべての業務を一度に見直すのではなく、担当者が不在になったときに影響が大きい業務から着手することが重要です。
たとえば、担当者しか判断できない業務や、問い合わせが頻繁に発生する業務を優先すれば、属人化を放置したときの業務停止や対応遅れを防ぎやすくなります。
実際に、三晃金属工業ではベテラン社員に蓄積された専門知識、古河電気工業では人事労務のイレギュラー対応など、現場で繰り返し必要になる情報から共有を進めています。
そのため、まずは「担当者が休職・退職したら止まる業務は何か」「ほかの社員から頻繁に質問される業務は何か」を洗い出し、優先順位を付けましょう。
手順だけでなく、判断基準や例外対応まで残している
属人化を解消するには、作業手順だけでなく、「どのような場合に、何を基準に判断するのか」まで残すことが重要です。
なぜなら、定型的な手順だけをマニュアル化しても、想定外の問い合わせやトラブルが発生したときには、結局ベテラン社員へ確認しなければならないためです。
たとえば、古河電気工業では基礎知識だけでなく、各拠点で発生したイレギュラー事例も共有しています。そのため、過去に似たケースがあれば、担当者が変わっても対応方法を確認できます。
このように、マニュアルを作るときは、「手順」だけで終わらせず、「判断のポイント」「過去にあった例外」「そのときの対応方法」まで残すことで、担当者個人への依存を減らせます。
情報が更新され、誰でも探せる仕組みで定着させている
属人化の解消では、情報を残すだけでなく、必要な情報が更新され、誰でもすぐに探せる状態を維持することが欠かせません。
たとえば、マニュアルを作っても、保存場所がわからなかったり、内容が古くなったりすれば、社員は使わなくなります。その結果、再び詳しい担当者へ直接質問する状態に戻ってしまうのです。
実際に、成功事例では情報を1か所に集約したうえで、検索して確認する習慣を作っています。また、質問から新しいナレッジを追加したり、テンプレートを用意したりして、情報を蓄積し続ける工夫もしています。
したがって、属人化を解消するには、情報の蓄積をゴールにせず、「誰が更新するか」「どこに保存するか」「社員がどう探すか」まで決めて運用することが重要です。
属人化の解消に失敗する企業によくある3つのパターン
属人化の解消に取り組んでも、進め方によっては十分な効果を得られない場合があります。ここでは、属人化の解消に失敗する企業によくある3つのパターンをご紹介します。
マニュアルを作って終わりにしている
属人化の解消でよくある失敗が、マニュアルを作成した時点で取り組みが完了したと考えてしまうことです。
業務内容や社内ルールは変化するため、作成後に更新されなければ、実際の業務と内容が合わなくなります。その結果、社員がマニュアルを見なくなり、再び詳しい担当者へ直接確認する状態に戻りがちです。
また、手順だけをまとめていても、判断基準やイレギュラー対応が残っていなければ、想定外のケースが発生したときに特定の社員へ頼る必要があります。
このように、マニュアルがあるだけでは、担当者しかわからない知識や判断が残り、属人化を十分に解消できません。
担当者に任せきりで会社全体として取り組んでいない
属人化の解消を一部の担当者だけに任せている場合も、取り組みが組織全体に広がらず失敗しやすくなります。
たとえば、業務改善担当者だけがマニュアルの作成や情報整理を進めても、現場の社員が協力しなければ、実際の業務で使われているノウハウを十分に集められません。
さらに、特定の担当者だけが情報の整理や更新を担っていると、その担当者が異動・退職した時点で、属人化解消の取り組み自体が止まる可能性があります。
つまり、属人化を解消するための活動そのものが一部の社員に依存すると、新たな属人化を生む原因になるのです。
ツールを導入しただけで運用ルールを決めていない
ツールを導入しただけで、情報の登録方法や更新方法が決まっていないケースも失敗につながりやすいです。
たとえば、社員ごとに記事のタイトルや分類方法が異なると、情報が増えるほど必要なナレッジを探しづらくなります。また、古い情報が残り続ければ、どの内容を信頼すべきか判断できません。
こうした状態では、ツール内に情報が蓄積されても社員が活用しなくなり、以前と同じように詳しい担当者へ直接質問する状態に戻ってしまいます。
したがって、ツールを導入していても、使い方が社員ごとに異なる状態では、属人化の解消にはつながりにくいと言えます。
自社で属人化の解消を進める4ステップ
属人化を解消するには、いきなりマニュアルを作るのではなく、属人化している業務を把握し、優先順位を付けたうえでナレッジを残すことが重要です。
ここでは、自社で属人化の解消を進めるための4ステップをご紹介します。
属人化している業務を洗い出す
最初に、「特定の社員しか進め方や判断方法を把握していない業務」を洗い出します。
たとえば、「担当者が休むと問い合わせに回答できない」「ベテラン社員に毎回確認しなければ進められない」といった業務は、属人化している可能性があります。
また、業務名だけでなく、担当者・作業内容・必要な知識・ほかの社員でも対応できるかまで整理すると、どこに属人化が発生しているのかを把握しやすくなります。
そのため、まずは各部署の管理職や担当者へヒアリングし、日常的に「この人に聞かないとわからない」となっている業務をリストアップしましょう。
不在時の影響と代わりの有無で、優先順位を決める
属人化している業務を洗い出したら、担当者が不在になったときの影響と、代わりに対応できる社員がいるかで優先順位を決めます。
たとえば、担当者が休むだけで出荷や請求が止まる業務は、影響が大きいため優先度が高いです。一方、ほかの社員でも代替できる業務は、急いで対応する必要性が低いと言えます。
このように、「不在になると業務が止まるか」「顧客や取引先に影響するか」「代わりに判断できる人がいるか」といった基準で整理すると、優先順位を付けやすくなります。
ナレッジを文書化し1か所に集約する
優先順位を決めたら、担当者が持つナレッジを文書化し、社員が同じ場所から確認できるよう1か所に集約します。
文書化するときは作業手順だけでなく、「どの条件なら承認するのか」「トラブル時はどう判断するのか」といった判断基準や、過去のイレギュラー対応も残しましょう。
また、Excel帳票やPDFマニュアル、チャットなど保存場所が分かれていると、必要な情報を探すだけで時間がかかります。そのため、関連するナレッジはできる限り同じ場所で管理するのがおすすめです。
このように、担当者の頭の中にある情報まで言語化して集約すれば、担当者が不在でも、ほかの社員が過去の知識をもとに対応しやすくなります。
更新の担当とルールを決め、定着させる
最後に、誰が・いつ情報を更新するのかを決め、ナレッジが使われ続ける状態を作ります。
たとえば、「業務手順が変わったら担当部署が更新する」「半年ごとに管理職が内容を確認する」など、更新するタイミングと担当者を決めておきます。
また、「わからないことがあれば、まず蓄積されたナレッジを検索する」といった確認手順を社内で統一すれば、担当者への質問が繰り返される状態も防ぎやすいです。
このように、属人化の解消は、マニュアルを作成した時点で完了するものではありません。情報を追加・更新しながら、社員が日常的に活用できる仕組みとして定着させることが重要です。
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まとめ|成功事例を参考に自社に合った方法で属人化を解消しよう
これまで、属人化の解消に成功した企業3社の事例や、成功企業に共通するポイント、自社で取り組む4ステップを中心にご紹介しました。
属人化を解消するには、マニュアルを作るだけでなく、担当者が持つ判断基準やイレギュラー対応まで残し、ほかの社員が必要なときに確認できる状態を作ることが重要です。
また、すべての業務を一度に見直すのではなく、不在時の影響が大きい業務から優先して取り組み、情報を継続して更新・活用できる仕組みまで整える必要があります。
とくに、過去にマニュアルを作ったものの定着しなかった企業では、成功事例を参考に「何を残すか」だけでなく、「どのように集約し、更新・活用を続けるか」まで見直すことが大切です。
属人化の解消を自社で具体的に進めたい方は、成功事例やナレッジ共有の考え方をまとめたホワイトペーパーも参考にして、自社に合った進め方を検討しましょう。
