暗黙知を言語化する方法|よくある失敗と正しい進め方
暗黙知とは、ベテランや成果を出し続けている人の「勘」「コツ」「判断の基準」といった、経験から身についた知識のことです。言語化されないまま個人の頭の中にとどまると、業務の属人化を招き、人材育成の妨げになります。
しかし、実際には「自分の判断を言葉にしようとしても『なんとなく』としか説明できない」「マニュアルを作ったのに、部下が同じように動けない」と悩む方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、暗黙知の言語化でよくある失敗、暗黙知を引き出す方法3選、言語化した内容を使い続ける運用のコツを中心に解説します。実際の事例も紹介しますので、チームの属人化を防ぐ参考にしてください。
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この記事でわかること
- 暗黙知の言語化は、「抽象的な言葉でまとめる」「本人だけで書き出す」「作って終わりにする」の3つの点で失敗しやすいです。原因を先に押さえ、手間をかけた言語化が空振りに終わるのを防げます。
- 暗黙知を引き出す方法には、インタビュー、成功事例の分解、同行・観察とフィードバックの3つがあります。できたかどうかは、数字や場面で書かれているか、理由まで書かれているか、他のメンバーが同じ場面で再現できるかで確認できます。
- 言語化した内容は、1か所にまとめて探せる状態にし、更新担当と期限を決めることで使われ続けます。書き出して終わりにせず、運用まで設計することが、属人化を防ぐポイントです。資生堂の事例も紹介します。
暗黙知とは
ここでは、暗黙知について「形式知との違い」と「SECIモデル」の観点から詳しく解説します。暗黙知の言語化に取りかかる前に、以下の内容を押さえておきましょう。
形式知の違い
暗黙知と形式知の違いは、知識が言葉や文書で表され、他の人と共有できる状態にあるかどうかです。
暗黙知は、個人の経験や勘にもとづく知識で、営業であれば商談中に相手の反応を見て話の方向を変える判断などが当てはまります。一方の形式知は、マニュアルや手順書、数値データのように、文章や図で表現でき、誰でも同じ内容を確認できる知識です。
つまり、暗黙知の言語化とは、個人の頭の中にある知識を形式知へ変えていく取り組みを指します。
SECIモデルとは

SECIモデルは、暗黙知と形式知を循環させながら組織の知識を育てていくためのフレームワークです。
モデルは、共同化・表出化・連結化・内面化の4段階で構成されます。たとえば営業チームでは、先輩の商談に同席して感覚を共有し(共同化)、判断の理由を言語化して(表出化)、既存の営業資料と組み合わせて体系化し(連結化)、各自が商談で試して身につける(内面化)という流れになります。
この記事で扱う「暗黙知の言語化」は、4段階のうち「表出化」にあたるため、前後の段階とあわせて進めることが重要です。
暗黙知の言語化でよくある3つの失敗
暗黙知の言語化は、手間をかけて取り組んでも、進め方を誤ると現場で使われない内容に終わってしまいます。ここでは、特に起こりやすい3つの失敗と、その避け方を順に見ていきましょう。
失敗①抽象的な言葉でまとめてしまう
暗黙知の言語化で最も多い失敗は、「柔軟に対応する」「顧客に寄り添う」といった抽象的な言葉でまとめてしまい、誰も再現できない内容になることです。
本人にとっては意味が通じる表現でも、読む側は「どの場面で、何を見て、どう動くのか」が分からず、行動に移せません。たとえば「相手の反応を見て提案を変える」と書いても、どんな反応が合図で、何をどう変えるのかが分からないので、マニュアルがあっても部下が同じように動けないのです。
そのため、言語化では場面、判断のきっかけ、取るべき行動を一組にして書き出すことが欠かせません。
失敗②本人だけで書き出そうとする
もう一つの典型的な失敗は、暗黙知を持つ本人が一人で書き出そうとして、肝心の判断の根拠が抜け落ちてしまうことです。
本人にとっては当たり前の判断ほど、無意識におこなっているため、何を書けばよいのか自分では気づけません。たとえば商談中の方針転換も、本人は何となく動いているつもりでも、第三者から「そのとき何を見ていたのですか」と問われて初めて、相手の視線や発言の間といった手がかりが言葉になります。
だからこそ、言語化は聞き手を置き、問いかけを通じて引き出す形で進めるのが効果的です。
失敗③置き場所と更新の仕組みを決めない
三つ目の失敗は、言語化した内容の置き場所と更新の仕組みを決めないまま進め、気づけば誰にも使われなくなることです。
どれだけ質の高い内容をまとめても、置き場所が決まっていなければ、メンバーが必要なときに参照できません。さらに、情報を更新する担当者や時期が決まっていないと、内容が現場の実態とずれていき、古い情報として誰にも活用されなくなります。
そのため、言語化と同時に、保管する場所と更新の仕組みまで決めておきましょう。
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暗黙知を引き出す方法3選
暗黙知を引き出す方法には、インタビュー、成功事例の分解、同行・観察とフィードバックの3つがあります。状況や使える時間に合わせて選べるよう、それぞれの特徴と進め方を順に紹介します。
インタビュー
インタビューは、聞き手が問いかけながら判断の根拠を聞き出す方法で、準備が少なく、最初に取り組む方法として向いています。
直近の商談など具体的な場面を1つ選び、「そのとき何に気づきましたか」「ほかの選択肢は考えましたか」と順に尋ねると、本人が意識していなかった判断の手がかりが言葉になります。聞き手は、伸び悩んでいるメンバーが務めると、本人が「どこが分からないのか」まで一緒に明らかになります。
30分ほどの時間と、題材にする業務が1件あれば始められるため、まず試す方法として取り入れてみましょう。
成功事例の分解
成功事例の分解は、うまくいった商談や案件を時系列で振り返り、成果につながった判断を一つずつ取り出す方法です。
結果が出た場面を題材にするため、本人も当時の行動を思い出しやすく、「なぜその手順を選んだのか」「どの時点でやり方を変えたのか」といった分岐点を具体的に拾えます。うまくいった事例だけでなく、うまくいかなかった事例と並べて比べると、両者を分けた違いも見えてきます。
そのため、過去の資料や記録から手軽に取り組める点が、この方法の強みです。
同行・観察とフィードバック
同行・観察とフィードバックは、熟練者の仕事ぶりを近くで見て、気づいた点をその場や直後に伝え合うことで、言葉にしにくい動きを捉える方法です。
本人に聞いても出てこない動作や、判断の前後にある細かな変化は、第三者が見ているからこそ気づけます。本人が自覚していない癖や判断の合図を、観察する側が拾って尋ねられるのです。
実際の業務の中でおこなうため、記憶に頼らず、その場の状況ごと記録に残せる点が、他の2つの方法にはない特長です。
言語化できたかを確認するチェック基準
書き出した内容が使える状態になっているかは、自分の感覚だけでは判断しづらいものです。以下の3つの基準で見直すと、抽象的なまま終わっていないかを確かめられます。
数字や場面まで書かれているか
一つ目の基準は、行動や判断が数字や具体的な場面で書かれているかどうかです。
「早めに対応する」「しっかり確認する」といった表現は、人によって解釈が分かれ、同じ動きにつながりません。たとえば「依頼を受けたその日のうちに」「見積もりの金額が前回より2割を超えたら」のように、時間、回数、条件、場面を示せば、読み手が迷わず動けるようになります。
そのため、書き出した内容に曖昧な言葉が残っていないかを、最初に見直してください。
理由まで書かれているか
二つ目の基準は、行動だけでなく、その行動を選んだ理由まで書かれているかどうかです。
手順だけが書かれていると、状況が少し変わったときに読み手は判断できず、書かれたとおりに動くしかありません。たとえば「納期が迫る案件は先に連絡する」と書くだけでなく、「遅れの報告が遅いほど、相手が調整できる余地が減るため」と理由を添えれば、似た場面でも自分で判断できます。
そのため、各項目に「なぜそうするのか」が書かれているかを確認しておくと、状況が変わっても使える内容に近づきます。
他のメンバーが同じ場面で再現できるか
三つ目の基準は、書き出した内容を読んだ他のメンバーが、同じ場面で同じように動けるかどうかです。
最終的な目的は、書いた本人以外が成果を再現することなので、実際に読んでもらって確かめるのが確実です。経験の浅いメンバーに内容を読んでもらい、「次に同じ場面が来たら、どう動きますか」と聞いて、本人の判断と一致するかを確認しましょう。
書いた本人と他のメンバーで判断がずれた箇所があれば、その都度内容を修正していくことで、暗黙知を確実に活用できる形で言語化できるのです。
言語化した暗黙知を「使われ続ける」状態にするには
言語化した内容は、書き出して終わりにすると、やがて誰にも参照されなくなります。ここでは、現場で使われ続けるために欠かせない、保管・検索・更新の3つの仕組みを順に紹介します。
ナレッジを1か所にまとめる
言語化した暗黙知を使い続けてもらうための第一歩は、ナレッジの置き場所を1か所に絞ることです。
チャットツール、メール、Excel、個人のフォルダなど複数の場所に分かれていると、メンバーは「どこを見ればよいのか」から迷い、結局は詳しい人に聞いてしまいます。参照先が1つに決まっていれば、探す手間が減り、「まずここを見る」という習慣も根づきやすくなります。
そのため、言語化した内容は、保管する場所を決めたうえで、そこに集約していきましょう。
誰でも必要な情報を探せる仕組みを作る
保管先が決まったあとに大切なのは、誰でも必要な情報にすぐたどり着ける検索の仕組みを備えることです。
保管先があっても、目的の内容が見つからなければ、メンバーは結局その分野に詳しい人に聞いてしまいます。フォルダを業務ごとに分ける、タイトルに調べるときの言葉を入れる、キーワードで検索できる状態にするなど、新人でも迷わず探せる工夫が欠かせません。
探す手間が小さくなるほど、使われる頻度も上がり、言語化した内容が現場に根づいていきます。
更新担当と期限を決める
言語化した内容を使われ続ける状態に保つには、更新する担当者と見直しの期限をあらかじめ決めておくことが重要です。
業務のやり方や状況は日々変わるため、更新されない内容は少しずつ実態とずれていき、やがて古い情報として活用されなくなります。担当者を内容ごとに決め、「月に1回」「四半期ごと」といった見直しの時期を設ければ、常に最新の状態を保てます。
運用の負担を抑えるためにも、最初から全てを対象にせず、重要度の高い内容から始めるのが現実的です。
【事例】ナレッジの属人化を解消させた株式会社資生堂

株式会社資生堂(化粧品メーカー)のグローバル規制部では、ナレッジの管理が特定の担当者に頼りきりで、最の情報が属人化している状態になっていました。これまで使っていたファイル共有サービスやイントラネットでは、情報を探すのが難しく、問い合わせがあっても必要な資料が見つからないこともあったといいます。
そこで同部は、担当者の頭の中にある知識を文書にして、常に最新の状態で共有するために「ナレカン」を導入しました。使いやすさ、続けやすさ、費用を比べ、まず必要な情報だけを入れて試したうえで、正式に導入しています。運用では専任の管理担当者を決めてルールを作り、本当に必要な資料だけを選んで移したうえで、正確さと新しさを保ちながら発信しています。
導入後は、必要な情報にたどり着きやすくなり、担当者への問い合わせが目に見えて減りました。部内で始めた運用は研究やマーケティングの部門にも広がり、「辞書のように使える」という声とともに、利用者は約800名になっています。
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まとめ|暗黙知を言語化して属人化を防ごう
これまで、暗黙知の言語化でよくある失敗や、暗黙知を引き出す方法3選、言語化できたかを確認するチェック基準を中心にご紹介しました。
暗黙知の言語化は、抽象的な言葉でまとめることや、本人だけで書き出すこと、置き場所と更新の仕組みを決めないことで失敗しやすくなります。そのため、インタビューや成功事例の分解などで判断の根拠を引き出し、具体的に書かれているかを確かめたうえで、情報を1か所にまとめて更新し続けることが大切です。
担当者に聞かなくても答えにたどり着ける状態をつくるには、書き残す負担が小さく、ITに詳しくないメンバーでも迷わず使えて、必要な情報にすぐたどり着ける仕組みが欠かせません。さらに、探す手間が減れば、言語化した内容が日々の業務の中で使われ、チームの資産として育っていくのです。
結論、暗黙知の言語化を進めるうえで最適なのは、言語化した内容を1か所に蓄積でき、上司に質問するような感覚で探せて、現場の誰もが直感的に使えるナレッジ共有ツール「ナレカン」です。
無料トライアルから始められるので、ぜひ「ナレカン」を導入し、一人ひとりの勘やコツをチーム全体で使い続けられる体制を整えましょう。
